名刺交換の基本的なマナーは社会人になるときに習得すると思いますが、どんな状況でも基本が通用するとは限りません。名刺交換には基本と例外があり、状況によっては「例外のマナー」で名刺交換すべきケースもあります。そして、この例外のマナーに当たるのが名刺の「同時交換」です。今回は、名刺を同時交換する方法などについて解説していきます。
名刺の同時交換はマナー違反?
名刺交換をする際、名刺は目下の人から、あるいは訪問した側から差し出すのが基本です。ですが、あなたが直近でおこなった名刺交換は、基本どおりになっていましたか? 「同時に差し出して同時に交換した」という方も多いのではないでしょうか。
このように、実際の名刺交換は「同時交換」でおこなうケースが少なくありません。名刺の同時交換は例外的な方法ですがマナー違反ではなく、むしろ、最近では同時交換をするのが一般的になりつつあります。基本ばかりにこだわらず、同時交換にもスマートに対応できるようにしておきましょう。
名刺を同時交換する際の手順
「名刺を両手で持って差し出す」のは名刺交換の基本マナーですが、この方法だと同時交換ができません。同時交換の際は、以下のような方法・手順でおこないます。
① 正面に立って、お互いに会社名・部署名・名前を名乗る
② 自分の名刺を右手に持ち、相手の左手の名刺入れに向かって差し出しながら、相手から差し出された名刺を左手にある名刺入れの上で受け取る
③ 相手から受け取った名刺に右手を添えて、両手に持った状態にする
②でご説明したように、左右の手で「受け取る」「渡す」を同時におこなうため、タイミングがズレたりして名刺を落としてしまうこともあります。決して急ぐ必要はありませんので、相手が自分の名刺をつかんだことを確認してから右手を離すようにしましょう。また、実際の同時交換のシーンでは③を忘れてしまう人もいますが、交換後は必ず右手を添えて両手で持った状態にしましょう。
相手から受け取った名刺は商談中、テーブルの上に置いておくのがマナーです。受け取った名刺の置き方や置く位置については、以下のページで詳しく解説しています。
複数人同士で名刺を同時交換する際のポイント
複数人同士で名刺を交換する際は、「目下の会社側から、あるいは訪問した会社側から名刺を差し出す」というルールに加え、「役職の高い人から名刺交換を始める」というルールがあります。具体的な状況で考えてみましょう。
自社側:自分A、課長Bさん、部長Cさん
訪問先:担当者Dさん、担当者の上司Eさん
この5人が名刺交換をする場合、以下の順番でおこないます。
① 自社の部長Cさん と 訪問先の上司Eさん
② 自社の部長Cさん と 訪問先の担当者Dさん
③ 自社の課長Bさん と 訪問先の上司Eさん
④ 自社の課長Bさん と 訪問先の担当者Dさん
⑤ 自分A と 訪問先の上司Eさん
⑥ 自分A と 訪問先の担当者Dさん
実際には、訪問先の上司Eさんの前に自社の3人が並び、名刺交換を終えた順に担当者Dさんと名刺交換する流れになるのが一般的です。
①~⑥の個々の名刺交換のシーンでは、訪問した側(A、B、C)から名刺を差し出して交換するのが基本ですが、上述したように同時交換でも構いません。状況に合わせて対応するようにしましょう。
名刺交換の超基本マナー
名刺交換の超基本マナーをご紹介します。できていないと恥ずかしいものばかりなので、必ず押さえておきましょう。
名刺交換の基本① 立って交換する
会議室などで着席した状態であっても、名刺交換をする際は必ず立つようにしましょう。また、自分の名刺交換が終わったからといって着席するのではなく、全員の名刺交換が終わるまで立っているのがマナーです。なお、テーブル越しに名刺交換をするのはNGです。自分から相手側に回り込んで交換するようにしてください。
名刺交換の基本② 名乗りながら名刺を差し出す
名刺交換の際、何も言わず名刺だけ差し出すことはあり得ません。必ず会社名と部署名、自分の名前を名乗り、軽くお辞儀をして名刺を差し出すようにしてください。名前を名乗る際は、フルネームを言うのがより丁寧だとされています。読みにくい名前であれば、ゆっくりと強調するように名乗りましょう。
名刺交換の基本③ 名刺入れの上に乗せて渡す
名刺交換をする際、名刺だけを手に持って渡すのはマナー違反です。必ず、名刺入れの上に名刺を乗せて渡します。なお、「名刺入れの上」と言っても直接名刺入れの上に置くのではなく、名刺と名刺入れの間に人差し指をはさんだ状態で差し出すようにしましょう。
名刺交換のNG例
名刺交換の際、マナー違反になるNG例をいくつかご紹介します。
名刺交換のNG① 折れたり汚れたりしている名刺を渡す
「もったいないから」「このくらいなら大丈夫」などと考え、端が折れた名刺や汚れた名刺を渡す人がいますが、これはマナー違反です。相手の立場に立って考えれば分かることで、受け取った側は不快な気持ちになるはずです。相手に「信用できない」「バカにされている」といった印象を与えてしまったら、その後の商談にも悪影響が及んでしまうでしょう。
名刺が折れたり汚れたりしたら廃棄して、新しいものに交換しておきましょう。折れたり汚れたりしていることに気付かないまま名刺交換してしまうこともあるので、商談に向かう前に名刺の状態を確認しておくことが大切です。
名刺交換のNG② 下を向いたまま交換する
名刺交換の際はどうしても手元に意識が向きがちなので、自分の名刺に目を落としながら名乗ったり、一度も相手の目を見ずに交換したりする人もいます。しかし、これでは印象が良くありません。名刺交換は初対面の人との最初のコミュニケーションです。手元に意識を向けつつも、相手の目を見ながら名乗って名刺交換するようにしましょう。
名刺交換のNG③ 社名やロゴの上に指を乗せる
名刺を受け取るときに、印刷されている相手の社名やロゴの上に指を乗せるのはマナー違反です。「敬意に欠ける」「軽んじられている」といった印象を与えてしまうため、注意が必要です。名刺を受け取るときは、名刺の両端下の余白部分を軽くつまむようにしましょう。
名刺交換のNG④ 受け取った名刺をすぐにしまう
受け取った名刺をすぐにしまうのはマナー違反です。受け取った名刺は、商談中はテーブルの上に並べておき、商談が終わって席を立つときにしまいます。このときも、目上の人より先にしまうのは避けるべきで、相手がしまってから、もしくは相手がしまうタイミングに合わせてしまうと失礼がありません。
ただし、これはあくまでも基本マナーであり、たとえばテーブルが狭くてノートPCや資料を置けないような場合は、その時点で名刺をしまっても構いません。その際は「お名刺をしまわせていただきます」「失礼します」など、ひと言断るようにしましょう。
まとめ
名刺交換は商談前のわずか数分のイベントですが、このときの作法や振る舞いで第一印象が大きく変わってきます。基本のマナーにこだわろうとすると、イレギュラーな状況でギクシャクしたり、相手にマイナスイメージを与えたりすることもあります。今回ご説明した「同時交換」など、例外のマナーもしっかりと身に付け、どんな状況でもスマートに名刺交換できるようにしておきましょう。
従来の名刺交換の例外と言えば、コロナ禍で増えている「オンライン名刺交換」もその一つです。オンライン名刺交換については、以下の記事を参考にしてください。