営業戦略と営業戦術の違いとは?戦略を立てる流れとポイントをご紹介

営業戦略と営業戦術の違いとは?戦略を立てる流れとポイントをご紹介

営業戦略は企業が目標を達成するために欠かせないものですが、自社にとって最適な営業戦略を立てるのは簡単なことではありません。「どうやって営業戦略を立てるべきなのか分からない・・・」という営業マネージャーも少なくないでしょう。今回は、営業戦略と営業戦術の違いや、営業戦略を立てる流れ、また営業戦略を成功に導くポイントなどについて解説していきます。

営業戦略とは?

営業戦略とは、企業が営業目標を達成するために立案する戦略・プランのことを言います。端的に言えば「誰に対して、何を売るのか?」という方針です。

営業戦略を立てないと、一人ひとりの営業活動に一貫性がなくブレが生じてしまいます。優秀な営業パーソンであれば、個人として売上を伸ばせるかもしれませんが、組織としての目標達成は期待できないでしょう。目標を達成するためには営業組織として目指すべき方向性を決めることが重要であり、そのためには営業戦略が不可欠です。

営業組織としての本質的な目標は売上アップですが、「売上を上げるためにどうするのか?」というプランはいくつか考えられるでしょう。そのなかで、もっとも売上アップにつながりやすい営業戦略を立案する必要があります。

営業戦略と営業戦術の違い

営業戦略と混同されがちなのが「営業戦術」です。営業戦術とは、営業戦略を実現するための具体的な手法のことを言います。つまり、「どのように売るのか?」という手段のことです。

たとえば、「富裕層の愛犬家にオーガニックのドッグフードを売る」という営業戦略を立てたとしましょう。この場合、「ペット関連のWebメディアに広告を出す」「動物病院で取り扱ってもらう」「メルマガ購読者にサンプルを送る」というような売るための手段が営業戦術です。

なお、すべての企業が営業戦略と営業戦術という言葉を明確に使い分けているわけではなく、営業戦術もひっくるめて営業戦略と呼ぶ企業も少なくありません。

営業戦略を立てる流れ

営業戦略を立てると言っても、10分、20分頭をひねって決めるようなものではなく、前提として現状分析や目標設定が必要になります。営業戦略を立てる際の一般的な流れは以下のとおりです。

営業戦略立案STEP① 現状分析をする

営業戦略を実効性のあるものにするためには現状分析が不可欠です。現状分析は、「内部環境分析」と「外部環境分析」に分けることができます。

内部環境分析

内部環境分析とは、自社でコントロールできる経営資源について分析することです。具体的な分析項目としては、ブランド力や認知度、人的資源や技術力、資金力などが挙げられます。これらを客観的に分析し、自社の強みと弱みを把握します。

外部環境分析

外部環境分析とは、自社でコントロールできない外部環境で、自社のビジネスに影響を及ぼすものについて分析することです。外部環境分析は、「マクロ環境分析」「顧客分析」「競合分析」の3つに分けることができます。

マクロ環境分析では、規制緩和や法改正などの「政治・法律」、性別や年代などの「人口動態」、個人消費や経済成長率などの「経済」といった自社を取り巻く環境を把握し、それぞれが業界や自社のビジネスに及ぼす影響を分析していきます。

顧客分析では、主に潜在顧客についての分析をおこないます。具体的な分析項目としては、購買人口、潜在地域、年齢層、男女比、潜在顧客のニーズ・課題、購買要因、購買決定プロセスなどが挙げられます。

競合分析では、競合他社の経営資源やポジショニング、価格戦略やプロモーション戦略などを分析することで、競合他社の強み・弱みを把握します。競合他社の強みと弱みを把握することで、自社が優位な立場を築くための営業戦略を立てやすくなります。

営業戦略立案STEP② 目標設定をする

上述のとおり、営業戦略とは営業目標を達成するためのプランのことです。当然のことですが、営業戦略を立てるためには前提として目標を設定しておかなければいけません。

目標を設定する際は、「年度末までに売上高◯円を実現する」「◯年中に利益率を◯%以上にする」など目標の数値と期限を明確にすることが重要です。また、実現可能な目標にすることも大切です。100を達成するために、あえて目標を150や200など高いところに設定するという考え方もありますが、無謀な目標を設定すると営業パーソンのモチベーションが削がれ、逆に達成が遠ざかってしまいます。現状を正確に把握したうえで「頑張れば何とか実現できそうな目標」を設定しましょう。

営業戦略立案STEP③ 営業戦略を立てる

現状分析の結果を根拠として、目標を達成するための営業戦略を立てていきます。「どの市場で、どんな顧客をターゲットに、どんな商品を売っていくのか」ということを中心にして、営業戦略を決めていきましょう。

営業戦略立案STEP④ 営業戦術を立てる

営業戦略が決まったら、その営業戦略をどのような手段で実現するのかを考え、実際の行動、つまり営業戦術に落とし込んでいきます。

営業戦術としては、たとえば「テレアポ」「広告」「Webサイト」「SNS」「DM」「展示会」などが考えられます。営業戦略を実現するために、最適な営業戦術を立てる必要があります。なお、一つの営業戦略に対して複数の営業戦術があっても問題はありません。むしろ、最初の営業戦術がうまくいかなかった場合にそれにこだわるのではなく、第2、第3の営業戦術に切り替えることも大切です。

また、営業戦略はできるだけ具体的に決めるようにしましょう。たとえば、テレアポであれば「何人の人材を配置するのか」「誰が担当するのか」「外部に委託するのか」といったところまで具体的にします。SNSであれば、TwitterなのかInstagramなのか、それともLINEなのか。広告出稿であれば、リスティング広告なのか動画広告なのか、もしくは雑誌広告やチラシなのか、といった具合です。

営業戦略を成功に導くための3つのポイント

営業戦略を成功に導くためには、以下の3つのポイントが重要になってきます。

シンプルかつ明確な営業戦略を立てる

営業戦略はできるだけシンプルで、誰が見ても解釈が異ならないようなものにすることが大切です。人によって受け取り方が変わってしまうような営業戦略や、抽象的な営業戦略では実効性が低くなってしまいます。シンプルかつ明確で、営業パーソンがすぐに覚えられ、そらんじることができるような営業戦略が理想です。

KPIを設定する

営業戦略を実行していくにあたっては、KPIを設定することが重要です。KPIとは、最終目標を達成するための前段として「まずはこの目標を達成しよう」という位置付けになる、いわば「中間目標」のことです。

KPIを設定することで、営業戦略の進捗度合いや目標の達成度合いを把握しやすくなります。そのため、営業戦略がうまくいっていない場合も、その原因を早期に発見でき、必要に応じて軌道修正を図ることができます。営業戦略に沿ったKPIを設定し、目標達成に向けて正しい方向に進んでいるかをモニタリングしていきましょう。

KPIについては、以下の記事でも詳しく解説しています。

>> KGI・KPIとは?設定方法や注意点を解説!

PDCAサイクルを回す

営業戦略は実行して終わりではありません。KPIを設定して進捗確認をするとともに、成果が出た場合も成果が出なかった場合も、検証することが大切です。

特に成果が出なかったときは原因や改善点を明確にして、営業戦術を練り直す必要がありますし、場合によっては営業戦略そのものを見直す必要があります。営業戦略・営業戦術を見直して実行したら、再び結果を検証・改善するというPDCAサイクルを回すことで目標達成に近づけるはずです。

営業戦略立案のためのフレームワーク4選

実効性のある営業戦略を立てるためには現状分析が必須です。現状分析をする際によく用いられるフレームワークを4つご紹介します。

フレームワーク① SWOT分析

SWOT分析は、自社の武器やチャンスになること、また自社の課題やリスクを明確にするためのフレームワークです。SWOT分析では自社を取り巻く環境を内部環境と外部環境に分け、内部環境である「強み」と「弱み」、外部環境である「機会」と「脅威」、この4つの視点から分析をおこないます。

強み(Strength)

自社が得意な点や競合他社に比べて優れている点で、目標達成に大きく貢献しうるもの

弱み(Weakness

自社が苦手な点や競合他社に比べて劣っている点で、目標達成の妨げとなりうるもの

機会(Opportunity)

業界や市場の変化など、活用すれば自社にとって有利に働くような機会や環境のこと

脅威(Threat)

業界や市場の変化、法改正など、自社にとって不利・負担になるような脅威や危険のこと

フレームワーク② PEST分析

PEST分析とは、政治的要因、経済的要因、社会的要因、技術的要因という4つのマクロ的要因から市場を分析するフレームワークです。自社の業界・ビジネスが、政治、経済、社会、技術の変化によってどのような影響を受けるのかを分析し、営業戦略立案の根拠とします。

政治的要因(Politics)

法律、法改正、条例、税制、政権交代などのこと

経済的要因(Economy)

人口動態、構成、密度、流行、世論、宗教、教育などのこと

技術的要因(Technology)

インフラ、イノベーション、新技術、技術革新、特許などのこと

フレームワーク③ 3C分析

3C分析とは、「自社」「顧客・市場」「競合」の3つのポイントで自社の現状を分析するフレームワークです。3C分析をおこなうことで、ビジネスの成功要因を見つけることができ、ビジネスの方向性を明確にすることができます。

自社(Company)

自社の強み・弱み、売上・利益・シェアなどの事業成果、経営理念・経営戦略、従業員数・設備、資金力・ネットワークなどの経営リソースを分析します。

顧客・市場(Customer)

市場規模や市場の成長性、顧客の性別や年齢、価値観、ニーズ、消費行動などを分析し、自社がどんな層をターゲットにするのかを検討します。

競合(Competitor)

競合他社の売上や営業、シェア、業界内でのポジションや経営リソース、マーケティング手法などを分析し、自社との違いを明確にします。

フレームワーク④ 5フォース分析

5フォース分析とは、自社にとっての脅威という視点から市場を分析するフレームワークです。以下の5つの脅威を分析することで、市場環境が自社のビジネスにどのように影響するのかを把握し、自社の競争優位性を探っていきます。

業界内の競合

業界内の競合他社は、自社のシェアを奪う存在として脅威になります。競合他社が多い場合は、価格競争を強いられ、利益が減少するおそれがあります。

新規参入者の脅威

業界に新しく参入してくる他社があると脅威になります。特に参入障壁が低い業界は脅威が大きく、知らない間に利益を奪われることになりかねません。

代替品の脅威

代替品とは、他の業界の商品・サービスで自社商品・サービスの代わりになるもののことです。たとえば、本の代替品は電子書籍です。自社の商品よりも低価格で顧客ニーズを満たせる代替品は大きな脅威であり、利益を奪われることになりかねません。

売り手の交渉力

売り手(サプライヤー)とは、自社に原材料などを卸している会社のことです。そもそも売り手が少ない場合など、売り手の交渉力が強いほど不利な条件で取引せざるを得ず、利益が減少するおそれがあります。

買い手の交渉力

買い手とは、主に消費者のことです。市場に競合他社がひしめいており、自社の商品・サービスが差別化しにくい場合などは買い手の交渉力が強くなり、安値で売らざるを得ないなど、利益が減少するおそれがあります。

営業戦略の事例3選

営業戦略の成功事例を3つご紹介します。

営業戦略事例① サイゼリヤ

サイゼリヤは、徹底した効率化とシステム化によってコストを削減し、メニューを安価で提供する営業戦略によって競争優位性を築いています。自社農場で育てた野菜を使ったり、各店舗での工程を減らすことで人件費を削減したりしているのは、同社の代表的な営業戦術だと言えるでしょう。

コスト面で競争優位性を築く営業戦略は「コストリーダーシップ戦略」と呼ばれます。コストリーダーシップ戦略で成功している企業としては、サイゼリヤのほか、マクドナルドやニトリ、ユニクロなどが有名です。

営業戦略事例② モスバーガー

商品を早く・安く提供することを追求するファストフード店が多いなか、モスバーガーは「おいしさ」を追求する営業戦略によって競争優位性を築いています。「日本人の好みにあったハンバーガーを提供すること」をコンセプトに掲げ、国産100%の食材にこだわるとともに、注文を受けてから調理する「アフターオーダー方式」を採用するなど、独自の取り組みによって競合店とは一線を画したポジショニングを確立しています。

コスト以外の独自の特徴を活かして顧客を獲得する営業戦略は「差別化戦略」と呼ばれます。差別化戦略で成功している企業としては、モスバーガーのほか、スターバックスやアップル、ソニーなどが有名です。

営業戦略事例③ スズキ

世界的にも有名な企業がひしめく日本の自動車業界において、軽自動車というカテゴリに特化して活路を切り開いたのがスズキです。スズキは、大手自動車企業との真っ向勝負を避け、軽自動車というセグメントに特化して経営資源を集中投下する営業戦略を展開。この営業戦略が時代の流れにもマッチして、軽自動車市場の拡大とともに同社も大きく飛躍していきました。

市場を特定のセグメントに絞って競争優位性を獲得する営業戦略は「集中戦略」と呼ばれます。集中戦略で成功している企業としては、スズキのほか、ケンタッキーやしまむら、オリンパスなどが有名です。

まとめ

市場や顧客、競合他社の変化を敏感に察知し、それを営業戦略に反映していかなければ、「VUCA(※)」と呼ばれる不透明な時代を生き抜いていくことはできません。本記事でご紹介したフレームワークや事例を参考に、ぜひ自社に合った実効性のある営業戦略を立て、営業活動を推進していきましょう。
※VUCA(Volatility:変動性/Uncertainty:不確実性/Complexity:複雑性/Ambiguity:曖昧性)