セグメンテーションとは?変数の種類や分類の適正を検証する4Rまで活用法を紹介

セグメンテーションとは?変数の種類や分類の適正を検証する4Rまで活用法を紹介

セグメンテーションとは?

セグメンテーションとは、自社の商品・サービスのターゲット層を決定するために市場・顧客を分類することです。たとえば、年齢や性別、居住地や生活習慣、パーソナリティや行動パターンなど、同じ特性を持った固まり(セグメント)で市場・顧客を細分化します。戦略的にセグメンテーションをおこない、自社にもっとも適したセグメントに対して集中的にマーケティング施策を実施することで、ビジネスの効果を最大化することができます。

セグメンテーションが重視される理由

近年、セグメンテーションの重要性が高まっていますが、その背景には、消費者ニーズの多様化やITテクノロジーの進化があります。

消費者ニーズの多様化

従来のマーケティングは、テレビや新聞などのマスメディアを利用して不特定多数の消費者にプロモーションをおこなう「マスマーケティング」が主流でした。消費者のニーズが比較的均一だった時代は、大量生産・大量消費のマスマーケティングで効果をあげることができました。

しかし、市場が成熟した現在では消費者の価値観や行動が多様化するとともに、ニーズも個別化しており、不特定多数に向けたアプローチで興味を引くことは難しくなりました。多様化した消費者ニーズに対応するためには、自社の商品・サービスに適した領域を見つけてピンポイントなマーケティングをおこなうことが重要であり、そのための手段として、きめ細やかなセグメンテーションが求められるようになったのです。

セグメンテーションによって市場・顧客を細分化して、自社が優位性を確保できるセグメントを見極めることができれば、最小限の予算で最大限の利益を生み出すことができるようになります。

ITテクノロジーの進化

マスマーケティングが主流だった時代も、市場や顧客を分類するという考え方はありましたが、大雑把なセグメンテーションしかできませんでした。ですが、インターネットやSNSが普及し、データ解析技術が進化したことで、消費者の価値観や趣向、ライフスタイルや購買行動などを詳細に把握できるようになりました。デジタルツールの活用によって容易にセグメンテーションができるようになった今、マーケティングの第一歩としてセグメンテーションは不可欠なものになっています。

セグメンテーションで用いられる切り口(変数)の例

セグメンテーションでは、以下のような切り口(変数)で市場・顧客を細分化するのが一般的です。様々な切り口でセグメンテーションをおこなうことで、「どんな商品・サービスが消費者ニーズに合致するのか」「どんなマーケティング施策が効果的なのか」といった戦略策定が容易になります。

人口動態変数(デモグラフィック変数)

人口動態変数(デモグラフィック変数)とは、年齢、性別、家族構成、職業、学歴、世帯年収など、消費者の属性に関する要素のことです。消費者ニーズの多くは人口動態変数と結び付いているため、セグメンテーションにおいてはもっともよく用いられる変数です。

例)
【年齢】 子ども、10代、20代、若者、中年、高齢者 など
【性別】 男性、女性、LGBT など
【家族構成】 独身者、既婚者、子どもの有無、親と同居 など
【職業】 自営業、経営者、ブルーカラー、会社員、専業主婦、学生 など
【世帯年収】 ◯◯万円~◯◯万円 など

地理的変数(ジオグラフィック変数)

地理的変数(ジオグラフィック変数)とは、国、地域、市区町村、気候、人口密度、人口規模、文化、宗教、生活習慣といった地理的な要素のことです。たとえば、食料品や衣料品、家電製品などは地理的な特性によってニーズに差が出るため、地理的変数によるセグメンテーションが重要になってきます。

例)
【地域】 関東、関西、都道府県、日本、海外 など
【気候】 温暖、寒冷、湿度、季節 など
【人口密度】 都市部、郊外、地方 など
【人口規模】 ◯万人~◯万人 など

心理的変数(サイコグラフィック変数)

心理的変数(サイコグラフィック変数)とは、社会階層やパーソナリティ、価値観やライフスタイルといった心理的な要素のことです。好き嫌いや善悪の判断、思想などを捉えて顧客を細分化します。定性的なので、従来はセグメンテーションをするのが困難でしたが、ITテクノロジーの進化によって詳細なセグメンテーションが可能になりました。

例)
【ライフスタイル】 アウトドア派、車好き、スポーツ好き、インドア派 など
【パーソナリティ】 ブランド志向、健康志向、新しいもの好き、保守的、神経質、社交的 など

行動変数(ビヘイビアル)

行動変数とは、商品・サービスの購買頻度、購買経路、使用頻度、用途、顧客が追求する利益(ベネフィット)、態度といった行動パターンに関する要素のことです。心理的変数と同様に、ITテクノロジーの発展によって測定しやすくなっており、多様化するニーズに対応するためには不可欠なセグメンテーションとなっています。

例)
【使用頻度】 ヘビーユーザー、ミドルユーザー、ライトユーザー など
【用途】 日常使い、特別な機会、特定の季節・イベント、贈答用 など
【ベネフィット】 品質、利便性、機能性、経済性、迅速性 など
【態度】 熱狂的、肯定的、無関心 など

有効なセグメンテーションをするための検証方法

有効なセグメンテーションがなされているかどうかを検証するための項目として、「4R」と呼ばれるものがあります。以下、4つの「R」に基づいてセグメントの有効性を判断しましょう。

Rank(優先順位)

属性ごとに分類したセグメントの重要度に合わせて優先順位を付けます。自社の経営戦略やマーケティング戦略と照らし合わせ、そのセグメントの収益性や魅力などを踏まえて順位付けするのがポイントです。優劣を付けられないセグメントでは、効果的なターゲティングをすることもできません。

Realistic(規模の有効性)

対象となるセグメントが、十分な売上・利益を確保できるだけの規模を持っているかどうかを検証します。売上・利益をあげることができない市場をセグメンテーションしてもあまり意味がありません。

Reach(到達可能性)

対象となるセグメントに、広告などのマーケティング施策や商品・サービスを届けることができるかどうかを検証します。たとえば、海外への展開を考える場合などは、輸送費や多言語でのプロモ―ションがネックにならないかを検証する必要があるでしょう。到達可能性が低い市場や、到達させるのにコストがかかる市場であれば、セグメントしての重要度は低くなります。

Response(測定可能性)

消費者の反応を測定できるセグメントであるかどうかを検証します。測定可能性のある市場であれば改善点の把握が容易で、PDCAサイクルも回しやすいので、後のマーケティング戦略を立てやすくなります。

セグメンテーションとターゲティング、ポジショニングとの関係性

セグメンテーションで市場・顧客を細分化したら、セグメントのなかから攻めるべき領域を絞り込み(ターゲティング)、自社の商品・サービスを差別化(ポジショニング)して訴求していきます。

この「セグメンテーション(Segmentation)」「ターゲティング(Targeting)」「ポジショニング(Positioning)」の3つを使った「STP分析」はマーケティングの有名なフレームワークの一つです。STP分析をおこなうことで、自社の商品・サービスをもっとも必要とする消費者グループを見つけ出すことができ、ニーズに合致した市場に効率良くアプローチすることができます。さらに、競合他社との関係において自社の独自性を明確にすることで市場でのアドバンテージを築くことができます。

ターゲティングとは?

セグメンテーションが市場・顧客を様々な変数を使って細分化することであるのに対し、ターゲティングはセグメンテーションした領域のなかから、自社がアプローチすべき領域を絞り込むことを言います。細分化した市場を評価して、どのセグメントで勝負をするのかを決定します。自社の商品・サービスのコンセプトやブランドイメージ、価格帯に合ったセグメントを選択することが重要です。

ポジショニングとは?

ポジショニングとは、セグメンテーションとターゲティングによって選択した領域において、自社の立ち位置を決定することを言います。選択した市場で選ばれるためには競合優位性が不可欠であり、コンセプトや機能、価格やデザインなど、あらゆる点で他社よりも魅力的な商品を開発し、差別化できるプロモーションを展開します。

まとめ

消費者ニーズが多様化する昨今、商品を開発するにしても、プロモーション戦略を立てるにしても、セグメンテーションは不可欠なものになっています。「ものが売れなくなった」と言われる時代ですが、精度の高いセグメンテーションができれば、新たな市場や顧客を取り込むことができるはずです。自社の商品・サービスがどんなニーズにマッチしているのかを見極めるため、時間とコストをかけてでも入念なセグメンテーションをするべきでしょう。