SPIN営業とは?ヒアリングの具体例も解説!名刺管理アプリ・ソフトならメイシー(maysee)

SPIN営業とは、顧客の潜在ニーズを引き出す「ヒアリング」を軸にした営業手法のことです。顧客のニーズを的確に把握するためのヒアリング能力は、営業パーソンにとって不可欠なスキルです。SPIN営業を実践して顧客の潜在ニーズを引き出すことができれば、成約にグンと近づけるでしょう。今回は、SPIN営業にフォーカスして、その特徴や進め方、具体例などについて解説していきます。

SPIN営業とは?

SPIN営業とは、顧客の潜在ニーズを引き出す「ヒアリング」を軸にした営業手法のことを言います。行動心理学者であるニール・ラッカム氏によって提唱されたものであり、述べ35,000件以上の商談を分析した結果に基づいて確立された営業手法です。

日本では、同氏による『大型商談を成約に導く「SPIN」営業術』という本が出版されたことがきっかけで広く知られるようになり、多くの営業組織においてSPIN営業の研修やトレーニングが採り入れられるようになりました。昨今はコロナ禍の影響でオンライン営業が一般的なものになっていますが、リモートでの営業活動の難しさから、あらためてSPIN営業に注目が集まっています。

SPIN営業の特徴

SPIN営業は、顧客に対して様々な質問を投げかけながら、顧客の潜在ニーズを引き出すことを目的としています。SPIN営業で用いられる質問は、以下のとおり、「Situation」「Problem」「Implication」「Need-payoff」の4段階に分けられており、それぞれの頭文字を取って「SPIN営業」という名称になっています。

・Situation Questions(状況質問):顧客の状況を把握するための質問
・Problem Questions(問題質問):顧客に潜在的な課題を認識させるための質問
・Implication Questions(示唆質問):顧客に課題解決の必要性を認識させるための質問
・Need-Payoff Questions(解決質問):顧客に課題解決後の状態をイメージさせるための質問

この4段階の質問をすることで、顧客自身に潜在的な課題に気付いてもらい、ニーズを顕在化させることで成約を狙うのがSPIN営業の特徴です。

SPIN営業の進め方

SPIN営業の「S」:状況質問

SPIN営業の「S」は「Situation Questions(状況質問)」です。顧客のことを理解していなければ最適な提案はできないので、まずは顧客について理解を深めるための状況質問をおこないます。状況質問をする際は、「最初にいくつか質問させていただいてもよろしいでしょうか?」とことわるのがマナーです。

状況質問が多すぎると顧客は尋問されているように感じ、抵抗感が生まれてしまうため、3~4つ程度の有益な質問だけに留めるようにしましょう。当然のことですが、顧客のWebサイトを見れば分かるような初歩的な質問は避けるべきです。顧客のビジネスについて下調べをしたうえで、そこから一歩踏み込んだ質問を心がけてください。

SPIN営業の「P」:問題質問

SPIN営業の「P」は「Problem Questions(問題質問)」です。問題質問は、顧客に潜在的な課題に気付いてもらうためにおこないます。

問題質問をするためには、事前に「このような課題があるのではないか?」という仮説を立てておくべきですが、「御社の課題は◯◯です」と決めつけるのはNGで、顧客自身に課題に気付かせるのが理想です。営業パーソンに課題を指摘されるより、自ら気付いた課題のほうが解決への意欲が高まります。

SPIN営業の「I」:示唆質問

SPIN営業の「I」は「Implication Questions(示唆質問)」です。示唆質問の目的は、問題質問で引き出した課題の重要度や深刻度を認識させることです。何となく課題だと思っていても、それほど深刻に捉えておらず、解決しようとしていないケースも少なくありません。このような顧客に、課題の重要度や深刻度を認識させることができれば、課題解決に向けて動いてくれる可能性も高まります。

示唆質問をするときは、その課題を解決しないことによる損失や悪影響、リスクなどのネガティブ要素を軸にします。このとき、客観的なデータや調査結果などを引用できると、より説得力が増します。ただし、あからさまに危機感を煽ると胡散臭くなってしまうので、さじ加減が重要です。

SPIN営業の「N」:解決質問

SPIN営業の「N」は「Need-Payoff Questions(解決質問)」です。解決質問の目的は、顧客に課題解決後の状態をイメージさせることです。課題が解決されることでどのようなメリットが生まれるかを、顧客に問いかけます。メリットが多いほど、またメリットが具体的なほど、課題解決への意欲が高まります。

解決質問をした結果、顧客が課題解決への意欲を示したら、課題を解決する手法を提案するという流れになります。

SPIN営業の事例

SPIN営業の具体例を、クラウド型の名刺管理システムの営業の場合と、フィットネスマシンの営業の場合でご紹介します。

SPIN営業の「S」:状況質問の事例

▼クラウド型の名刺管理システム
・今は、どのようは方法で名刺を管理しているのですか?
・全部で何枚くらいの名刺を管理していますか?

▼フィットネスマシン
・週に何日くらい、ジムに通っているのですか?
・1年前に比べると、どのくらい体重が増えましたか?
・食事制限はしていますか?

SPIN営業の「P」:問題質問の事例

▼クラウド型の名刺管理システム
・(エクセルで管理している場合)入力するのが大変ではないですか?ミスはありませんか?
・(名刺ホルダーで管理している場合)必要な名刺を探すのが面倒ではないですか?

▼フィットネスマシン
・仕事で忙しい日は、なかなかジムに行けなくないですか?
・食事制限を続けるのはつらくないですか?

SPIN営業の「I」:示唆質問の事例

▼クラウド型の名刺管理システム
・そんなに名刺情報があるのに社員に共有されていなかったら、機会損失になりませんか?
・今の管理方法だと、顧客の個人情報が流出してしまうリスクがありませんか?

▼フィットネスマシン
・ジムの月額費用を考えると、週に◯回は行かないとコストの無駄になりませんか?
・運動習慣がない人は、心疾患のリスクが◯%高まるのをご存じですか?

SPIN営業の「N」:解決質問の事例

▼クラウド型の名刺管理システム
・今ある名刺情報を全部門の社員がすぐに閲覧できるようになったら、どうなると思いますか?
・過去の名刺情報を時系列で確認できたら、どんなことに活用できそうですか?

▼フィットネスマシン
・ジムと同等の運動が自宅でできるとしたら、いかがでしょうか?
・毎日30分の運動を3ヶ月継続できたら、どうなると思いますか?

SPIN営業を成功させるポイント

事前準備を入念におこなう

SPIN営業の軸になるのは顧客へのヒアリングですが、何でもその場で聞けば良いというものではありません。あらかじめ顧客に関する情報を収集し、顧客が抱えていそうな課題を想定しておきましょう。そのうえで、どんな質問をすべきかを検討します。ヒアリングシートを作成して、考えられる質問をすべてリストアップするのもおすすめです。

また、質問に対して予想外の答えが返ってくるケースもあるため、様々なパターンでシミュレーションをしておくべきです。どんな展開になっても商談を有利に進められるよう、入念に作戦を立てたうえで営業に臨んでください。

顧客自身に気付かせる

SPIN営業では、営業パーソンが知りたいことを質問するのではなく、できるだけ顧客自身に気付かせるような質問をするのが理想的です。

問題質問であれば、顧客自身が課題に気付けるような質問を、示唆質問であれば、顧客自身が課題の重要性を認識できるような質問をして、顧客の口から答えを引き出すようにしましょう。そのためには、「Yes or No」で答えられる質問ではなく、相手が自由に回答できる「オープンクエスチョン」にするのも一つのテクニックです。オープンクエスチョンをすることで、より多くのことを顧客に考えさせることができますし、より多くの情報を得ることができます。

露骨な売り込みをしない

SPIN営業では、露骨な売り込みをしないのも重要なポイントです。くれぐれも、顧客が解決策に辿り着く前に自社商材を提案することがないようにしてください。

解決質問までおこない、顧客が課題解決への意欲を示したら、課題を解決できる手法を提案していきますが、このときも自社商材をあからさまにプッシュするのはおすすめできません。露骨に自社商材を勧めると押し付けがましくなり、会社やサービスに対する印象を悪くしてしまうリスクもあります。目指したいのは、顧客から「こういうサービスってないんですか?」と言わせることです。

基本的な営業プロセスとSPIN営業

一般的に、営業プロセスは以下のように進みます。この流れにSPIN営業を当てはめると、「N」の解決質問だけは「③プレゼンテーション」と捉えることもできますが、基本的に「S」「P」「I」「N」の4段階の質問は、すべて「②ファクト・ファインディング」に含まれると考えましょう。

もちろん商談なので、「④クロージング」まで持っていけるに越したことはありませんが、あくまでもSPIN営業の目的は顧客の潜在ニーズを引き出すことです。「②ファクト・ファインディング」を充実させるようにしましょう。

①アプローチ

アプローチは、商談の場の緊張感を和らげるフェーズです。営業パーソンにとっては雑談力も重要なスキルです。時事ネタや顧客の興味のありそうな話、共通の話題などを切り出して、空気をほぐしていきましょう。アプローチの段階で「場づくり」がうまくいけば、商談もスムーズに進みやすくなります。

②ファクト・ファインディング

ファクト・ファインディングは「真実を見つける」という意味です。具体的におこなうことはヒアリングです。ヒアリングを通して顧客の現状や課題を探っていきます。事前にリサーチした情報も大切ですが、できるだけ先入観を持たないようにして、顧客の真実・本心を客観的に捉えるようにしましょう。

③プレゼンテーション

プレゼンテーションは文字どおり、顧客に対する提案です。顧客の本質的な課題を捉えたうえで、自社商材でその課題を解決できることを分かりやすく説明をしていきます。質疑応答も挟みながら、顧客が知りたい情報を的確に伝えていきましょう。

④クロージング

クロージングは契約を締結することを意味しますが、強引に説き伏せて契約させることではありません。あくまでも商談の最終確認として、顧客の意思決定を促すフェーズだと考えましょう。

まとめ

営業は、トーク力よりも「聞く力」が大切だと言われることがあります。優秀な営業パーソンは例外なく、聞く力に優れているものです。この聞く力を伸ばすのに役立つのが、今回ご紹介したSPIN営業です。ぜひ、SPIN営業を採り入れて営業スキルを磨いていきましょう。