KPIとは、目標の達成度を評価するための「重要業績評価指標」のこと。簡単に言えば、ゴールを目指すうえで「中間目標」になるものです。KPIを設けることで、ゴール至るまでのプロセスが可視化され、進捗状況を把握しやすくなります。今回は、KPIのメリット・デメリットや、KPIを設定する手順・コツなどについて解説していきます。
KPIとは?
KPI(Key Performance Indicators)は日本語で「重要業績評価指標」と訳されるもので、目標の達成度を評価するための指標のことを言います。ゴールを目指すうえで、「中間目標」になるものだと考えると分かりやすいでしょう。
KPIを理解するためには、「KGI」や「KFS」という概念についても押さえておく必要があります。
KPIとKGI、KFSの違いとは?
KPIとKGIの違い
KGI(Key Goal Indicator)は日本語で「重要目標達成指標」と訳されるもので、最終的な目標を評価するための指標のことを言います。売上や利益は企業におけるKGIの代表例です。
KGIは、事業やプロジェクトで達成すべき最終目標になるものです。しかし、会社が「年商1億」というKGIを掲げただけでは、あまりにも漠然としていて、一人ひとりの従業員からしたら「そのために何をすべきか?」が分からないでしょう。そこで、「KGIを達成するために、まずはこの目標をクリアしましょう」という中間目標を掲げます。この中間目標がKPIです。
KGIが「最終目標」「ゴール」であるのに対し、KPIは「中間目標」「プロセス」であると認識しておきましょう。KGI・KPIについては、以下の記事でも詳しく解説しています。
KPIとKFSの違い
KFS(Key Factor for Success)は日本語で「重要成功要因」と訳されるもので、事業やプロジェクトの最終目標(KGI)を達成するためのカギになる要因のことを言います。「これを頑張れば目標を達成できる」という場合の「これ」に当たるのがKFSです。KFSを明確にすることで無駄な取り組みを排除でき、有効な施策だけに注力できるようになります。
KGIやKFS、KPIについて説明するときに、よく例として用いられるのが「ダイエット」です。以下を見れば、それぞれの位置付けを理解できるでしょう。
▼KGI
・1年間で10kg痩せる
▼KFS
・運動をする
・食事制限をする
▼KPI
・毎日10,000歩のウォーキングをする
・週に3回、5kmのジョギングをする
・1日おきにジムで30分以上のスイミングをする
・20時以降は食事をしない
・糖質を50%減らす
・毎日、体重 × 1.0gのタンパク質を摂取する
KPIを設定するメリットとは?
一般的に、KPIを設定することで以下のようなメリットがあると言われています。
KPIのメリット① やるべきことが明確になる
KPIを設定することで、ゴールに至るまでのプロセスが可視化され、「何をやるべきか」が明確になります。上述したダイエットの例であれば、「毎日10,000歩のウォーキングをする」というようにアクションが具体的になるので、迷いなく目標に向かうことができます。
KPIのメリット② 個人や組織のモチベーションが高まる
目標達成のためにやるべきことが明確になると、一人ひとりの従業員のモチベーションアップも期待できます。「KPIを達成するためには、どんなスキルが必要なのか?」といった思考にもつながり、従業員の成長が促されます。組織全体で見ても、やるべきことや進むべき方向が明確になることで一体感が醸成され、従業員同士の結束による成果創出が期待できるでしょう。
KPIのメリット③ 軌道修正を図りやすい
KPIを設定することで、目標達成までの進捗を管理しやすくなります。たとえば、「1年間で10kg痩せる」というKGIに対して、3ヶ月の段階で2kgしか痩せていなかったとしましょう。このペースでは、1年間で8kgしか痩せることができません。この場合、「じゃあ、ウォーキングを12,000歩にしてみよう」「ジョギングを5kmから6kmにしてみよう」というように、早い段階で軌道修正を図ることが可能です。結果的に、KGI達成の可能性も高くなります。
KPIのメリット④ 組織内の評価基準を統一できる
KPIは明確な数値で設定されるため、分かりやすく結果が出ます。その結果を根拠にすれば、客観的な評価をすることができます。組織内での評価基準を統一できるのは、KPI設定の一つのメリットだと言えるでしょう。
たとえば、ある営業組織が「一人あたり月間15件のアポイント獲得」というKPIを設定していた場合、1ヶ月で20件のアポイントを獲得した人は目標達成となりますし、10件しか獲得できなかった人は目標未達成となります。誰から見ても同じ基準で評価できるため、評価が公平なものになりますし、評価に対する不満も出にくくなるでしょう。
KPIを設定することで考えられるデメリット
KPIを設定する際は、以下のようなデメリットが生じる可能性も認識しておかなければいけません。
KPIのデメリット① 指示待ちになってしまうことがある
KPIを設定することで目標達成のためにやるべきことが明確になるというのは、上述したとおりです。これはKPI設定の利点ですが、一方で、やるべきことが明確になることで、従業員が「言われたことだけやっておけばいい」という思考に傾いてしまう可能性もあります。その結果、「会社がKPIを示してくれないと行動できない」というような指示待ち人間が増えてしまうリスクもあります。
このような状態になるのを避けるためには、従業員をKPIの設定に関与させるなどの工夫が必要になるでしょう。
KPIのデメリット① 近視眼的になってしまうことがある
特に営業組織の場合は、個々の営業パーソンに毎月のKPIが設定され、KPIの達成度合いによって給与・賞与が左右されるケースは少なくありません。この弊害として考えられるのが、従業員がKPIの達成に執着するあまり、その企業で働く一員として大切なことを見失ってしまうことです。
たとえば、成約率を上げるために顧客に強引に契約を迫ったり、新規顧客の獲得ばかりにこだわって既存顧客をないがしろにしたりするのは、どこの企業にも起こり得ることです。そうなると、顧客満足度が低下したり、悪い口コミが出回ったり、会社のブランディングが低下したりといった悪影響が生まれます。
もちろんKPIがある以上、それを追い求めるべきですが、それ以前に、企業で働く一員として理念やビジョンに則った行動をしなければいけません。そのためには、前提として従業員の教育やスタンス形成が重要になってきます。
KPI設定のコツは「SMART」
KGIを達成するためには、「いかに的確なKPIを設定できるか?」が重要です。的確なKPIを設定するためには、「SMARTの法則」を用いるのが良いと言われます。SMARTの法則とは、以下の5つの要素から構成される法則で、目標設定のフレームワークとして有名です。
Specific(明確である)
KPIは明確で、従業員にとって分かりやすいものでなければいけません。たとえば、「空いた時間で自己研鑽をする」というようなKPIは、著しく明確性に欠けています。このように、人によって解釈が異なるようなKPIは不適切です。
Measurable(測定可能である)
KPIを設定したら、定期的にその達成度合いをモニタリングしていきます。このとき、KPIが測定できないものだと進捗を確認することができません。そのため、KPIは測定可能なものにする必要があります。
たとえば、顧客満足度をKPIにするのであれば、クレーム件数、リピート率、リテンションレート(既存顧客維持率)や、お客様アンケートの集計結果など、測定できるものを定めるべきです。
Achievable(達成可能である)
達成の可能性があまりにも低いKPIを設定すると、「こんなのはどうせ無理だ・・・」と従業員がモチベーションを失い、KGIの達成も遠のいてしまいます。自社の現状を正しく把握したうえで、「頑張れば達成できる」レベルのKPIを設定するようにしましょう。
Related(KGIと関連性がある)
KPIは、KGIと関連性のあるものを設定するようにしましょう。すべてのKPIを達成したのにKGIを達成できなかったとしたら、そもそもKPIの設定が不適切だったということになります。これは非常に深刻なミスであり、「何のために頑張っていたんだ」「誰がこんなKPIを設定したんだ」というように、上層部への不信感につながりかねません。
Time-bounded(期限がある)
KPIを設定する際は、数値で指標を示すとともに、その指標をいつまでに達成するのかという「期限」を設けることも重要です。人は、期限が決まっていないことを後回しにしがちなので、結果的にKGIの達成が難しくなってしまいます。
KPI設定の具体的な手順
KPIを設定する際は、前提としてKGIやKFSを設定する必要があります。大まかには、「①KGIを設定する」→「②KFSを洗い出す」→「③KPIを設定する」→「④KPIを達成するための行動計画を立てる」という流れになります。
手順① KGIを設定する
まずは、事業・プロジェクトの最終目標であるKGIを設定します。KGIは、売上や利益を設定するのが一般的です。KGIを設定するときは必ず、現状との差分を確認しておきましょう。現状が分かっていないと、現実離れしたKGIを設定してしまう可能性もあります。
手順② KFSを洗い出す
KGIを設定したら、KGIを達成するために欠かせない要因であるKFSを洗い出していきます。「月間売上1,000万円」というKGIを設定したのであれば、KGIを達成するためのKFSとしては「契約金額」や「契約件数」などが考えられます。
手順③ KPIを設定する
KFSを洗い出したら、それぞれのKFSを定量的な指標であるKPIにブレイクダウンしていきます。「月間売上1,000万円」というKGIを達成するために、「契約金額」と「契約件数」というKFSを洗い出したとしましょう。この場合、たとえば「契約金額100万円 × 契約件数10件 = 月間売上1,000万円」というシミュレーションが成立します。
月間の稼働日が20日だとすると、少なくとも2日に1件は契約を獲得する必要があります。2日に1件のペースで契約を獲得するためには、「1日に何件の商談をすればいいのか?」「何%の成約率を維持すればいいのか?」というように逆算してKPIを設定していきます。
手順④ KPIを達成するための行動計画を立てる
KPIを設定したら、そのKPIを達成するための行動計画を立てていきます。たとえば、「週に3件の商談をする」というKPIがあるのであれば、そのために「1日に◯件のテレアポをする」「毎週月曜日に見込み顧客にメール配信をする」というようなアクションプランを立てるわけです。
まとめ
KPIを設定することで従業員のやるべきことが明確になり、目標達成への意欲も高まります。ぜひ効果的なKPIを設定して、組織全体が一丸となって目標達成へと向かっていきましょう。